top of page

ソニー、スペクトル型セルアナライザ最上位機種『ID7000™』を発売

 ソニーは細胞分析装置(フローサイトメータ)の新商品として、44色以上(※1)の超多色細胞解析をシンプルな操作で効率的に実現するスペクトル型セルアナライザの最上位機種『ID7000™』を発売する。

スペクトル型セルアナライザー 最上位機種『ID7000』
スペクトル型セルアナライザー 最上位機種『ID7000』

 本機は、ソニー独自の最新のスペクトル解析技術を結集し、最大7つのレーザー(※2)と計188チャネルの光検出器、解析アルゴリズムを用いることで、超多色かつ高精度な解析を実現した。これにより、多種多様な細胞集団の中からがん細胞や幹細胞などの希少な細胞の検出を、一度の解析で可能にする。  多色解析の性能については、一般的に市場で活用されているセルアナライザで30色程度の解析を実現しているが、本機では44色以上の多色解析ができるため、原理的には一度の細胞解析で約16,000倍(※3)の情報収集が可能となる。


  細胞分析装置(フローサイトメータ)とは、特定の条件下で発光する薬品(蛍光試薬)で細胞を染色し、細胞にレーザー光を照射した際に発する光(蛍光)を、散乱光や蛍光情報として検出することで、細胞の特性を解析する装置である。1秒間に数万個におよぶさまざまな細胞の大きさや個数、細胞表面や細胞内部の各種情報(構造、機能、バイオマーカ等)を解析することが可能。  近年、免疫学やがん、再生医療などの研究領域では、基礎研究や疾患の原因究明、医薬品開発などを目的として、フローサイトメータが広く活用されている。たとえば、新しいがんの治療方法として注目が集まる「がん免疫療法」の研究では、免疫細胞やがん細胞の詳細な解析が不可欠であり、細胞表面に発現している複雑な抗原を一度に網羅的に調べたいといった需要が高まっている。  ID7000の発売を通じて包括的な細胞情報の取得を可能とし、科学的知見を深め、さらなる研究の進展に貢献する。


※1 現在市販されている蛍光色素で確認した数字。320nmレーザーに対応した蛍光試薬と組み合わせることにより、今後増える可能性がある。

※2 搭載するレーザーは最低3つから。オプションで最大7つに追加搭載可能。

※3 30色の解析が可能なセルアナライザーと比較した場合。セルアナライザーのデータは、マーカ数に応じて2の累乗で増加することを用いて算出。

■主な特長

1. 最新のソニー独自のスペクトル解析技術を結集し、44色以上(※1)の超多色解析を実現

①最大7レーザー(※2)と188チャネルの光検出器(※4)により、一度により多くの蛍光情報を計測可能

 本機には、波長の異なる最大7つのレーザー(※2) (320nm/355nm/405nm/488nm/561nm/637nm/808nm)と、レーザー照射により発する光を検出する検出器を188チャネル搭載しています。これにより、360nmから920nmまでの幅広く、蛍光の波形形状(蛍光スペクトル)を検出でき、蛍光情報のより高精度な分析を可能にした。 なお、新たに搭載した320nmのレーザーにより、細胞自体が自然に発光する微弱な蛍光情報(自家蛍光)の検出や、将来的には44色以上のさらなる多色解析を実現する。


※4 『SA3800』の場合、4レーザーと36チャネルの光検出器を搭載。


②改良したスペクトラルアンミキシングにより、蛍光情報の色素補正を精度良く迅速に処理

独自のアルゴリズムを用いることで、重複する蛍光色素のスペクトル情報を各色素に分離でき(スペクトラルアンミキシング)、蛍光波長のピークがよく似た蛍光試薬や蛍光タンパク質の分離も、高精度で再現性高く解析する。 従来の解析手法では、多色解析になればなるほど、補正作業が複雑化するが、一方で、スペクトラルアンミキシングを用いれば、客観的かつシンプルに色素補正が行える。 さらに、アルゴリズムを改良し高速化したことで、多色解析であっても迅速な処理が可能である。



2.シンプルな操作で効率的な超多色解析を実現する2つの新機能

①スペクトラルリファレンスライブラリー

 蛍光の波形形状情報などを、スペクトラルリファレンスとして簡単に登録・検索・選択できる機能を搭載する。従来では、解析時に計測する色素が増えるほど、コントロールサンプルの準備などの前処理や測定、解析時の重複する色素の補正などが複雑化し、作業工数の増大が課題となっていた。

 本機能により、これらの作業が不要となり、コントロールサンプルが必要な場合と比較し、短時間で細胞解析が行えるため、多色解析の作業工程を簡略化する。


②自家蛍光ファインダ

 細胞解析において、細胞自体の発する微弱な蛍光情報(自家蛍光)は、本来取得したい蛍光情報の阻害要因となりえるため、自家蛍光の波形形状を事前に特定する必要がある。

 一方で、多くのサンプルの測定をすると、サンプルごとに自家蛍光の波形が異なるなど、定量的な特定が難しいケースがあった。本機では、新たに自家蛍光ファインダを用いることで、自家蛍光集団を特定できる。さらに、自家蛍光を他の蛍光情報から分離できるため、この課題を克服し、解析の安定性向上に寄与する。


③改良したオートサンプラーによる安定した自動測定

 オートサンプラーの使い勝手をさらに改良し、低キャリーオーバーを踏襲しながら、サンプルの攪拌機能や保冷機能の刷新などにより、細胞へのダメージをさらに抑えることができ、高速かつ安定的な測定に対応する。



3.改良したオートサンプラーによる安定した自動測定

 オートサンプラーの使い勝手をさらに改良し、低キャリーオーバーを踏襲しながら、サンプルの攪拌機能や保冷機能の刷新などにより、細胞へのダメージをさらに抑えることができ、高速かつ安定的な測定に対応する。


①サンプルプローブ(※5)振動によるサンプル撹拌(かくはん)機能を新たに搭載

 本機では、サンプルプローブ(※5)を振動させることでサンプルを撹拌する方式を採用し、細胞へのダメージを最小化しました。さらに、測定中の撹拌と、水冷装置によるサンプル保冷が可能なため、長時間にわたる解析時も、細胞を生きたまま安定的に測定できます。


②解析中のエラー検知と自動シャットダウン機能に新たに対応し、作業効率化に貢献

 サンプル測定中に起きやすいエラーである空気の混入等を検知し、自動的に装置状態を復帰させます。さらに、専用の洗浄チューブホルダを新たに設けたことで、サンプルプローブ(※5)とウェルプレート(※6)の洗浄もでき、測定および洗浄後の自動シャットダウンにも対応しました。測定作業を本機に任せて他の作業を行え、作業効率が改善でき、運用コストも削減できます。


③オートサンプラーの対応フォーマット

 96ウェルプレート(※6)、384ウェルプレート(※6)および5mLチューブラック(※7)


※5 細胞溶液を吸い込み、レーザー照射部まで細胞を送り届けるノズルを指す。

※6 長方形の板状の容器で、複数種類の細胞溶液などを個別に収納できるよう、ウェルと呼ばれる井戸状の穴が多数配列されたものを指す。たとえば96ウェルプレートでは、ウェルが8行×12列に配列されている。

※7 細胞溶液を入れる5mLのプラスチックのチューブを、整列して立てかけるためのラックを指す。4行×6列で枠が用意されており、最大24本の5mLチューブを立てかけることが可能。


bottom of page